ラッカセイは栄養成長と生殖成長の重複する期間が長い。すなわち、茎葉を成長させながら、子実形成を行う無限伸育型の植物である。さらに、地上部で開花・受精後、子房柄が伸長し地下で結実する。このため、開花数が多い割には、正常な子実になる割合が低い。原因の1つに同化産物の転流の悪さが上げられる。同化産物の転流・分配を改善するために、植物ホルモンの1つであるアブシジン酸(ABA)が有効である事が昨年度の結果から明らかになった。さらに、今年度は栄養条件、地下部の観察を容易にする目的で水耕栽培を行い、子実肥大へのABAの効果を子実一粒ごとにその肥大過程を追跡した。 その結果、開花前期の莢実では、莢の長さ、幅ともに肥大前半では無処理区と変わらないものの、肥大後半ではABA葉面処理の1ppm、10ppmで肥大が良好に進んだ。また、開花後期の莢実でもABA処理区で肥大は良好であった。したがって、ABA葉面処理による効果は、開花時期を問わず、子実の肥大前半では莢実の肥大にはあまり効果は見られないものの、肥大後半での肥大促進、また開花時期の遅い子実での肥大促進効果が認められた。ABAには莢実の肥大ステージによって異なり、肥大の後半で処理することでより効果的に作用するものと思われた。これらのことは、子実の肥大過程における内生植物ホルモンの動態から、肥大中期から後期にかけてのABAが増加することからも裏付けられた。
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