ラッカセイは開花期間が長くまた結莢率が低く低収量である。これは栄養生長と生殖生長の重複する期間が長く、この間の同化産物の子実への転流・分配が効率よく行われていないためと考えられる。さらに、地上部で開花・受精後、子房柄が伸長し地下で結実する。このため、開花数が多い割には正常な子実になる割合が低い。同化産物の転流・分配を改善するために、植物ホルモンの1つであるアブシジン酸(ABA)が有効である事が各種植物ホルモンの外与試験の結果から明らかになった。さらに、子実への同化産物(糖)の転流・分配、および窒素の吸収(^<15>Nトレーサーを用いて)と転流(遊離アミノ酸)に及ぼすABAの影響を明らかにした。 子実形成期から成熟期における主茎、分枝、子房柄、莢の出液中の糖含有量は莢で多く、高いシンク能を持つ。また、糖組成は主茎、分枝、子房柄中ではサッカロースは見られず、転流形態は主にグルコース、フラクトースであった。したがって、莢の内側の紙状組織でサッカロースの合成が行われ、子実に転流するものと推測された。ABA処理による全子実収量の増加は認められなかったが、全子実中に占める大きな子実(0.7g以上)数の割合は増加し、特に開花後期における子実の肥大に効果が見られた。これは、ABA処理により処理後10日目、20日目の成熟途中の子実中により多くの^<15>Nが分配されたためである。また、ABA処理により、主茎基部および開花後期の子房柄からの溢必液中のアスパラギン含有量が増加し、さらに種皮中の全遊離アミノ酸の子葉への転流が促進した。 以上のことから低濃度のABAは、子実への糖および窒素の転流に多大に影響を及ぼし、特に開花後期の子実の肥大を促進することが明らかになった。
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