イネの茎葉部および地下部の発育(分げつ芽や冠根の分化出現)は、母茎の葉の出現と同周期的に進行する。従って、葉の出現する速度は個体全体の生育のペースメーカであり、その遺伝的制御機構を明らかにすることはイネの発育制御上、重要である。本研究では、イネの葉が出現する速度(出葉間隔:ある葉が出現してから次の葉が出現するまでの時間間隔)の制御機構を明らかにするため出葉間隔の品種間差をもたらす遺伝子の染色体マッピングを試みた。平成12年度に水稲IR36(インディカ稲、出葉間隔が極めて短い)とLemont(ジャポニカ稲、出葉間隔が極めて長い)のF2(200個体)をポット栽培し出葉間隔を測定するとともにDNAを採取し、45個のRFLPマーカーを置いて予備的な解析を行ったが、本年度はマーカー間隔を約20cM間隔まで補完し、出葉間隔に関する量的形質遺伝子座(QTL)のマッピングを完成させた。その結果新たなQTLも検出され、第9、11染色体上に各1個、第1、2染色体に2個のQTLが同定できた。また、これらのQTLのうちの1つは突然変異体よりクローニングされたトウモロコシの出葉間隔制御遺伝子とシンテニーの関係にある領域に位置しており、その相同遺伝子がイネの出葉間隔の品種間差の原因の1つとなっている可能性が考えられた。なお、これらのQTLは、同時に得られた分げつ数のQTLと同一領域に位置しており、出葉間隔の変異が上述の発育秩序を通して分げつ数を強く基底していることが確認された。
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