イネの茎葉部および地下部の発育(分げつ芽や冠根の分化出現)は、母茎の葉の出現と同周期的に進行する。従って、葉の出現する速度は個体全体の生育のペースメーカであり、その遺伝的制御機構を明らかにすることはイネの発育制御上、重要である。本研究では、イネの葉が出現する速度(出葉間隔:ある葉が出現してから次の葉が出現するまでの時間間隔)の制御機構を明らかにするため出葉間隔の品種間差をもたらす遺伝子の染色体マッピングを試みた。材料としてIR36(インディカ稲、出葉間隔が極めて短い)とLemont(ジヤポニカ稲、出葉間隔が極めて長い)のF2(190個体)をポット栽培し出葉間隔を測定するとともにDNAを採取し、86個のDNAマーカーを置いて連鎖地図を作成し出葉間隔に関する量的形質遺伝子座(QTL)をマッピングした。その結果、第1、2、9、11染色体に計5個のQTLが検出された。これらQTLの寄与度は8〜16%の範囲にあった。また、第9染色体のQTLを除きLemontの対立遺伝子が出葉間隔を延ばす方向に作用していた。これらの結果より、出葉間隔は、主動遺伝子ではなくポリジーン系によって制御されるものであることがわかった。なお。これらのQTLのうち、第1染色体に座乗するQTLはトウモロコシの突然変異体よりクローニングされた出葉間隔制御遺伝子terminal ear 1とシンテニーの関係にある領域に位置しており、その相同遺伝子がイネの出葉間隔の品種間差の原因の1つとなっている可能性が考えられた。
|