本学大学院農学生命科学研究科附属農場において、過去6年間にわたりトウモロコシとオオムギの1年2作を行っている圃場を中心として試験を行った。2000年度の試験では、ドリルムギの場合には土壌条件が良好でない圃場でかつ低施肥栽培条件下で能力を発揮することが示された。2001年6月収穫の16系統(コムギ7系統)に関しては、普通区のコムギ全系統で倒伏が認められ、堆肥のみの施用区においても1系統を除く全系統およびオオムギにおいてもドリルムギと極短桿2系統を除いて倒伏した。倒伏の起こる原因に関しては従来言われている茎長、穂重あるいは単位茎長あたり茎重等で説明できないものが多いことが認められ、品種ごとにその原因が異なることが示唆された。倒伏しなかった系統では、普通区で最も収量が多くなった系統と施肥条件と収量の間に関係の認められない系統があり、後者の方がミニマム施肥条件に適していることが示された。2002年6月収穫のムギに関しては、施肥量を前年の70%としてコムギ4系統、オオムギ6系統を栽培したが、標準区の半量施肥でも倒伏した系統があり、倒伏程度と収量の間に相関が認められる傾向があり、年次間による気象条件の変動と関係があると考えられた。また、対比して行った隣接圃場における半量施肥圃場のコムギにおいては、ほとんど倒伏は認められなかったが、圃場の中の場所による収量変異が認められ、それには年次による安定性がある程度認められた。これらをまとめると、施肥条件に加えて土壌由来の養分放出、特に窒素の放出量がムギの生育に大きな影響を及ぼし、その時間的変動により窒素の過剰吸収が問題となることが示唆された。夏作のトウモロコシの場合には過剰吸収が明らかに認められた。今後、土壌由来の窒素を含め、養分吸収と品種の特性、特に倒伏との関係について研究を進める必要があることが示された。
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