水稲の有機栽培では除草、病害虫発生の危惧、低収性などが栽培上問題となる。そこで、初年度は稲体珪酸含有率が高いと病害虫抵抗性が高まることに着目し、稲体を素材とする各種珪酸質資材の供給能力と根の生理的活性および稲体珪酸吸収量との関係を検討した。また、次年度は増収を意図して、窒素の施用量を変えて珪酸質資材との相互効果の有無を検討した。用いた品種は両年ともコシヒカリで、雑草防除のために移植時に再生紙をマルチングした。初年度は珪酸質資材として籾殻堆肥、稲藁堆肥、籾殻薫炭を用い、基肥窒素量を2段階とした試験区を設けた。次年度は窒素施用量4水準と籾殻施用を組み合わせた試験区とした。両年とも土壌溶液、出液、稲体を採取し、それぞれの窒素および珪酸含量を定量した。初年度の収量は222〜409g/m^2で極めて低収であった。珪酸吸収量は籾殻薫炭>籾殻堆肥>稲藁堆肥>無施用の順で、土壌溶液中珪酸濃度と葉身珪酸含有率との間には正の相関関係があった。また、出穂期までの出液中平均珪酸量と出穂期の葉身珪酸含有率とは比例関係が成立した。次年度の収量は526〜615g/m^2囲にあり極めて高収量であった。この原因のひとつとして出液速度が前年の約2倍と高く保たれていたことが考えられた。収穫時の窒素吸収量は窒素施用量の増加に伴って増加し、籾殻施用により珪酸吸収量は増加した。葉身珪酸含有率は培地の影響を受け、窒素は土壌溶液濃度を高めると出液中濃度、葉身含有率ともに高まる傾向にあった。これより、有機栽培では根の活性を高く保てば、窒素、珪酸ともに多く吸収され、病害虫被害の少なくかつ高収量が得られることが明らかとなった。
|