研究概要 |
平成12年度は,根から吸収されたKが葉の光合成速度を低下させるプロセスとして,葉のK成分が直接影響を及ぼすのではなく,拮抗的に吸収が抑制されるMgを介して維管束鞘細胞のNADP-MEとRubiscoの活性を低下させ,最終的に光合成速度を低下させていると予想し,その実体を究明した. その結果,根系にKを処理して葉のK含量に差異を生じさせたところ,Kが増大すると光合成速度,気孔伝導度,水ポテンシャルが低下し,また、NADP-ME, Rubiscoも低下した.葉のMg含量を調べたところ,Kの増大に伴い減少した.そこで,酵素活性測定時にMgの濃度を変えてみたところ,高濃度のK条件下で栽培されたサトウキビの葉の両酵素活性は,低濃度で栽培されたものに比較して全体的に低かった.従って,NADP-MEとRubiscoに対するKの影響は,不可逆的であり,葉の成長の初期段階で決定されていると推察された. 平成13年度は,サトウキビの絞りかすであるバガスを炭化して得られるバガス炭が糖度,収量に与える影響を調査し,沖縄におけるK成分に着目した循環型農業の可能性を検討した.バガス炭にはK成分が多量に含まれるが,その混入量の違いがサトウキビの成長および品質に与える影響を調べた.土壌1kgに対しバガス炭を10,30,50gとなるように施用した.施肥は,改良型ホークランド水耕液を週1回,1ポット当たり500ml与え,潅水は適宜行った.植付け5ヵ月後のサトウキビの茎長,茎重,搾汁液元素成分および糖度を測定した. その結果,バガス炭に含まれるKは,サトウキビに吸収されることが確認された.また,バガス炭処理におけるKの吸収量の変化がキビの生育,品質に影響を与えないことから,バガス炭は,K肥料の代替になるのではと考えられた.従って,バガス炭による土壌物理性の改善とともに,サトウキビの肥料の削減が期待できることを明らかにした.
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