研究概要 |
本年度は,β-glucronidase遺伝子(gus)を導入した根粒菌を用いることにより,異なる濃度の硝酸態窒素施用条件下におけるS.rostrataの根粒形成阻害の様相について詳細に観察することを試みた.スライドグラス上にすき間を設けてカバーグラスを接着させた装置を用いて,S.rostrataを生育させた.無窒素液体培地を用い,KNO_3をNとして0,10,70mg/L添加する3処理区を設けた.gusで標識した根粒菌Azorhizobium caulino-dansを接種し,スライドグラスを経時的に検鏡するとともに,根粒数および側根数を調査した.また,主根の側根出現部位の横断切片を作成し,青色発色領域ならびにその近傍における根粒原基の形成を観察した.播種後9日目には,0mg/L区および10mg/L区では根粒が確認されたが,70mg/L区では根粒の形成は認められず,硝酸態窒素による根粒形成の阻害を確認することができた.播種後10日目には,70mg/L区と10mg/L区はともに0mg/L区に比べて根粒数が明らかに少なかった.側根の出現部位を含む主根の連続横断切片の観察により,播種後7日目には,0mg/L区および10mg/L区において,主根ではなく側根の皮層に根粒原基が形成されることが確認されたが,70mg/L区では確認できなかった.側根について,その出現数を調査したところ,0mg/L区ならびに10mg/L区に比べて70mg/L区では少なく推移した.主根への根粒菌の付着程度を調査したところ,10mg/L区と70mg/L区では0mg/L区に比べて有意に小さかった.以上のように,硝酸態窒素の高濃度条件下における根粒形成の阻害は,側根の出現の抑制と根粒原基の分化の遅延によることが推察された.
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