研究概要 |
1,ジャスモン酸(JA)の市販の試薬から、LC-MSにより真の画分を確認してHPLCにより精製した。この標品により抽出に適する溶媒を試験し、さらにHPLCによる精製および液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)による簡便な定量法の条件を確立した。 2,トマトの果実のサイトカイニンを効率的に定量するために、入手可能な種類の標品のHPLCカラムにおける保持時間などの基礎的な特性およびLC-MSの感度向上のためにマススペクトルなどの情報を得た。 3,トマトの植物体の茎切片の頂端側に放射性標識のインドール酢酸(IAA)を施与して基部側の寒天中から放射能を有する成分を抽出して、HPLCで分析することで、IAAが極性移動するときの代謝を経時的に明らかにした。特に、施与後4時間でIAAはほぼ代謝されていた。 4,トマトの果実から切片を切り出して果実内でのIAAの極性移動の向きと強さに明らかにした。また、トマトのアダルトな苗で、水差し法(茎を地際で切断して水に浸漬)で採取したIAAの拡散量の分析により極性輸送量を算出し、次ぎの成果を得た。第1に3つの生長段階とも、0-4時間で苗あたりでの極性輸送量は一定であり、無傷の植物体の状態に近いと考えられた。第2に0-4と4-8時間では明条件は暗黒条件より5倍位の極性輸送量であったことから、ほぼ完全な暗黒の夜ではIAAは微量にしか生産されないが、曇りの日ではIAAが生産されて徒長すると考えられた。第3に葉の切除の影響茎区が茎+葉区よりも極性輸送量は2倍程度多かったことから、葉からのIAAの極性輸送が茎の極性輸送を抑制するなどの未知な機構が働いている可能性を示唆した。
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