研究概要 |
カンキツ幼果より砂じょう組織を切り出し,種々の培地条件,培養条件の下で培養を行い、培養砂じょうの糖,酸含量および糖代謝酵素活性を樹上果実と比較した.成果の概要を下記に示す. 1.カルス形成が無く、樹上果実とほぼ同様な砂じょうの発達、糖・酸集積を得るには、開花後50日以降の果実を外植体とし、培地の糖濃度を10%以上とする必要があった. 2.培地の糖の種類としては,スクロース、グルコースが適しており,培地の糖濃度の増加に伴ない培養砂じょう中の糖含量も増加し、継代培養も可能であった. 3.培養砂じょうにおける糖・酸含量は培地のN成分の多寡によって影響を受け,糖集積および酸分解を促進するにはN濃度を減じる必要があった.また,N濃度の低下に伴ない,全糖に占める還元糖の比率が高まった. 4.培地の水ポテンシャルを低下させると,培養砂じょうの糖含量の上昇および酸含量の分解抑制が生じた.この場合,さじょうの肥大生長は抑制された.しかし,水ストレスと関連深いABAの添加による糖・酸含量への影響は見られなかった. 5.培地より吸収したスクロースは他の還元糖にも変換し,その変換の程度は外植体の発育ステージによって異なり,培養砂じょう中での各種糖代謝酵素の活性が確認された. 6.酸代謝の異なる各種カンキツの培養砂じょうでは,種,品種の特性に伴なう酸含量の増減が認められ,酸代謝においても樹上果実とほぼ同様であった. 7.培養砂じょうにおける各種糖代謝酵素の活性は樹上果実と同様な季節的変化を示し,培養条件の差異に伴なう糖含量・組成の変化を説明し得る酵素活性の変化が認められた.
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