研究概要 |
砂じょうの培養系の利用はカンキツ果実の糖・酸代謝の機構解明に有効な手段と考えられる.そこで,本研究ではウンシュウミカン果実より取り出したアルベド付の砂じょう組織を培地組成の異なるMS基本培地に植え付け,暗黒,25℃条件下で培養を行って砂じょうの糖・酸含量の変化を調査した. 1.培養砂じょうは良く肥大して着色した.とくに10%スクロース培地で長期にわたり培養した場合は樹上の果実と同様な糖の集積および酸の分解がみられた.培地糖濃度が低い場合は糖・酸の集積がみられなかった.また,糖の集積を得るには開花後51日以降の幼果を培養する必要があった.培養に際して用いる培地の糖源としてはスクロース、グルコースが適しており、フルクトースは砂じょう成長が劣った. 2.培地のスクロース濃度および水ポテンシャルを違えて培養を行った結果,スクロース濃度が高い培地ほど糖の集積が多く,酸含量が高かった.また、水ポテンシャルが低いほど砂じょうの肥大成長が劣り,高糖・高酸含量となった. 3.窒素レベルを違えた培地で培養した結果,窒素レベルが低い培地ほど高糖,低酸含量を示し、培地の窒素レベルと糖含量は負の相関,酸含量とは正の相関がみられた. 4.培地より取り込まれた糖は培養砂じょう内で代謝を受け,他の糖へ変換された.培養砂じょう内の糖代謝関連酵素の活性はSS,SPSおよびInvertaseともに樹上果実における活性よりも高かったが、これらの活性の時期的変化は両果実間で差異はなかった.
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