研究概要 |
前年度まで(平成12〜14年度)の研究では,培養液に添加された2,4-Dichlorobenzoic acid分解菌がキュウリの栄養生長に及ぼす効果について検討した.その結果,培養液に2,4-Dichlorobenzoic acidを添加するとキュウリの栄養生長は抑制されたが,2,4-Dichlorobenzoic acid分解菌懸濁液を培養液に入れると2,4-Dichlorobenzoic acidは分解されてキュウリの生育抑制は回復した.また,抑制物質である2,4-Dichlorobenzoic acidがキュウリの生殖成長すなわち収量(収穫果実数)に及ぼす影響について検討し,2,4-Dichlorobenzoic acid分解菌懸濁液を培養液に入れると2,4-Dichlorobenzoic acidは分解されてキュウリの収穫果実数低下の回復がみられるかどうか検討した.その結果,培養液に2,4-Dichlorobenzoic acidを高濃度(10μmol/liter)添加したにもかかわらず,分解菌懸濁液を添加すると収穫果実数の回復がみられた.また,キュウリ自身の根から滲出される生育抑制物質に対して分解菌が効果を及ぼすかどうか検討した.その結果,生殖成長期に2,4-Dichlorobenzonic acid分解菌懸濁液を培養液に入れると,キュウリの収穫果実数低下の回復がみられた.ただ,懸濁液を培養液に添加するタイミングについて検討が必要だと考えられた.また,以上の研究成果を2002年8月にトロント(カナダ)で行われた第26回国際園芸学会で口頭発表する機会が与えられ,その際外国研究者から多くのアドバイスをもらった.以上より,キュウリの自家中毒回避法として,微生物利用が考えられた. 本年度(平成15年度)は2,4-Dichlorobenzoic acid分解菌懸濁液を培養液に入れるタイミングについて検討を重ねた.その結果,キュウリ根から2,4-Dichlorobenzoic acidが滲出される生殖成長期に分解菌を培養液に添加した場合に顕著な効果がみられた.栄養成長期から分解菌を培養液に添加すると,たとえ生殖成長期に再び添加しても大きな効果は認められなかった.なお,この結果は次ページにあるように海外誌であるScientia Horiticulturaeに投稿し,3月に発行された. 今後は,分解菌懸濁液を培養液に添加するタイミングについて詳細に検討し,効果的な微生物利用について検討したい.
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