研究概要 |
本研究は収穫後の老化が顕著にみられるブロッコリー花蕾と成熟過程にクロロフィル分解とカロテノイド生成が顕著にみられるピーマン果実を用い,成熟・老化に伴う活性酸素生成及びその消去機構発現について検討した。本年度に得られた結果は以下である。 1.ブロッコリーを15℃貯蔵すると,高温処理されたものでは花蕾の老化が抑制されたが,対照区では急激に老化がみられた。アスコルビン酸ペルオキシダーゼ(APX)活性について調べたところ,クロロプラスト型APX活性は高温処理および対照区で貯蔵に伴い急減した。一方,高温処理区のサイトゾール型APX(cAPX)は対照区に比べ貯蔵中活性の維持が認められた。またcAPX遺伝子の発現レベルも,対照区では貯蔵に伴い急減したが,高温処理区では高く維持されていた。スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)活性について調べたところ,両区とも貯蔵中の活性変化はほとんどみられなかった。さらにアイソザイムについてみたところ,Cu, Zn-SOD(1バンド),Mn-SOD(2バンド)およびFe-SOD(2バンド)が検出されたが,両区において貯蔵に伴う変化はほとんどみられなかった。以上の結果から,高温処理されたブロッコリーでは,貯蔵中に活性酸素消去酵素としてcAPXの活性が保持されることにより老化抑制されているものと推察した。 2.ピーマン果実の熟度段階を黄化程度によりGreen(G), Green/Yellow(GY), Yellow/Green(YG), Yellow(Y)に分類し,SODとAPXについて成熟に伴うアイソザイムおよび細胞内分布の変化を調査した。SODはCu, Zn-SOD, Mn-SOD, Fe-SODとも存在し,特に,Cu, Zn-SODがGYおよびYG段階でアイソザイム数が増え,その活性も増加した。一方,細胞内分布ではGおよびY段階ともサイトゾルに多く存在し,その程度はY段階でより大きかった。APXはサイトゾル型アイソザイムがGY段階からYG段階で増加した。また,その細胞内分布はGおよびY段階ともサイトゾルに多く存在し,SODと同様にY段階でその程度は大きかった。
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