研究概要 |
園芸作物・果実果皮のエチレン誘導-脱緑・黄化(クロロフィル代謝)に関与する酵素類の単離・精製を行った.クロロフィル(Chl)代謝のType I反応に関与する酵素であるChlorophyllaseとC-13^2-カルボキシルピロフェオフォルビドaを生成する酵素(CPFE)はカルボキシルエステラーゼである.ウンシュウミカン果皮のChlorophyllase以外に新たにCPFEを精製した.さらに,エチレン処理-ブロッコリー花らいからもCPFEの単離・精製を行った.花らいのCPFEは,5ステップの精製過程で約400倍以上にまで精製され,SDS-PAGEにより分子量は約29kDaであった.また,それぞれのCPFEの酵素化学的特性を明らかにした. Chl代謝の「Key」酵素であるChlorophyllase遺伝子をウンシュウミカン果皮・トマト果皮・カイワレダイコン子葉・シロイヌナズナ葉・ピーマン果皮より単離した.また,Chl-サイクルに関与する酵素としてのChl bリダクターゼ遺伝子の存在をディファレンシャル・デイスプレイ(D.D)法によりシロイヌナズナ葉・トマト果皮を用いて明らかにした. ノーザンハイブリダイゼーション法・RT-PCR法により,エチレン誘導-ウンシュウミカン果皮Chlorophyllase遺伝子(Cu-CHL)の生理機能の解析を行った.脱緑(Chl代謝)の認められない初期段階(エチレン処理期間中)に遺伝子の発現とさらに酵素活性の劇的な増大が確認された.また,エステラーゼの活性作用に必須と考えられる遺伝子配列中のp-ループモチーフを含むように設計したプライマーによりRT-PCRを行ったところ,特異的なDNA断片がエチレン処理により誘導生成されることを明らかにした. Chl代謝過程にはヘム代謝開環産物のビリルビン(BR,酸化ストレスにより誘導される抗酸化物質)様-Chl代謝開環産物が生成することを抗BR-モノクローナル抗体で確認し,ESR解析によりBR様-Chl代謝開環産物のフリーラジカル種消去機能を明らかにし,また,抗酸化物質含有量/生成量の低い変異体トマト果実では,高酸化ストレスの条件下において,一過性のBR様-Chl代謝開環産物の誘導生成を起こし,その後,bc1-2(アポトーシス抑制遺伝子)様遺伝子のmRNA発現量の増大を確認した.
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