研究概要 |
本年度はおもに低温がホウレンソウのSOD遺伝子およびAPX遺伝子の発現におよぼす影響を調査した.また,アルコルビン酸(ビタミンC)合成の指標として細胞質のデヒドロアスコルビン酸還元酵素(DHAR)遺伝子の発現についても解析した. 1.紫外線がホウレンソウのアスコルビン酸濃度とSOD, APXおよびDHAR遺伝子の発現におよぼす影響 (1)アスコルビン酸濃度 2002年春季にホウレンソウを紫外線除去フィルム下(処理)とビニルフィルム下(対照)で栽培した.過去2年の結果と同様に,紫外線除去したものでは,対照とくらべて,有意にアスコルビン酸濃度が高かった. (2)SOD, APXおよびDHAR遺伝子の発現解析 紫外線除去したホウレンソウでは,3つの遺伝子とも,対照より有意に発現が弱かった. 以上の結果から,ホウレンソウでは紫外線を除去すると,スーパーヒドロアニオン,過酸化水素の生成が減少するため,アスコルビン酸合成が減少し,この結果としてアスコルビン酸が減少すると考えた. 2.低温がホウレンソウのアスコルビン酸濃度とSOD, APXおよびDHAR遺伝子の発現におよぼす影響 (1)アスコルビン酸濃度 2002〜2003年にかけてホウレンソウを雨よけトンネルおよび最低夜温15℃としたガラス室(対照)で栽培した.雨よけ栽培したものでは,昨年と同様に対照とくらべて,有意にアスコルビン酸濃度が高かった. (2)SOD, APXおよびDHAR遺伝子の発現解析 処理と対照において,SOD遺伝子の発現に差異は認められなかった.APXおよびDHAR遺伝子では,処理のほうが対照より有意に発現が強かった. 以上の結果から,ホウレンソウを低温下で栽培すると,過酸化水素が生成されるため,アスコルビン酸合成が増加すると考えた.
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