研究概要 |
キュウリモザイクウイルスダイズ系統(SSV)のSSV-DとSSV-Cはダイズ品種Harosoyに接種すると前者は全身感染し、後者は全身感染しない。このことからHarosoyには品種特異的な抵抗性因子が存在するものと考えられ、我々はこれを天然抵抗性因子と名付けてこの遺伝子の分離、同定を目標に2年間、研究を行ってきた。以下に2年間の研究成果について箇条書きにする。 1.Harosoyを白豆と交雑し、F2世代の植物にSSV-Cを接種して遺伝様式を解析した結果、Harosoyの抵抗性因子は2因子の優性補足遺伝子であることが強く示唆された。 2.この抵抗性を誘導する原因のSSVのウイルス遺伝子を同定するために、SSV-CとSSV-Dとの間でシュードリコンビナントウイルスやキメラウイルスを作出して、ダイズに接種した結果、SSVの2b遺伝子と3a遺伝子の両遺伝子が共に関与することが明らかになった。 3.次に、抵抗性発現の作用点を明らかにするために、まずプロトプラスト接種によって、両ウイルスの1細胞での複製能力を比較した結果、Harosoy細胞でSSV-Cの複製阻害は特に観察されなかった。 4.ハンマープロット法で接種葉でのウイルスの局在を観察した結果、Harosoyでは両ウイルス間に細胞間移行の差異は認められず、SSV-Dのみ全身感染した。 以上の3,4の結果を総合するとHarosoyの抵抗性の作用点はウイルスの全身移行阻害であることが判明した。 今後、これらの結果を基礎にこの天然抵抗性遺伝子の分離・同定へ進んでいきたいと考えている。
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