本研究は、カルフォルニア州サクラメント稲作地帯の散在した水田において出現したタイヌビエの多除草剤抵抗性生物型の生態遺伝学的を解析を行い、この抵抗性生物型の起源を考察することを目的とした。本年度は、研究最終であり、抵抗性の遺伝様式の解明と研究全般の総括を行った。 1.抵抗性の遺伝様式:抵抗性の遺伝様式を解析するために、代表的な抵抗性系統と感受性系統を交雑し、自殖F_2における除草剤抵抗性と感受性個体の分離比を調査した。土壌処理剤benthiocarbとmolinateに対する茎葉長のF_2(SR×SR)個体頻度分布は、3:1の分離比に適合したが、F_2(RS×RS)は適合しなかった。また、茎葉処理剤fenoxapropとbispyribac-Naに対する茎葉長のF_2個体頻度分布は、正逆方向とも3:1の分離比に適合した。この結果、タイヌビエの多剤抵抗性が同一の機構に基づくと仮定すると、抵抗性を優性とする1対の対立遺伝子によって支配されていることが示唆された。また、戻し交配検定の結果もこの遺伝様式を支持した。 2総括:除草剤抵抗性の15系統が形態的にもまたAFLP fingerprintingにおいても、僅かな変異を含みながら極めて類似性が大きいことが示されたことから、カリフォルニア州サクラメントのタイヌビエ除草剤抵抗性生物型の起源はこの稲作地帯のある1つの集団に存在していた除草剤抵抗性を前適応的に有するな変異個体にあると考えられた。時間の経過とともに、この特定の変異個体の後代は、極まれな他殖とヘテロ形質の分離によって後代で変異を拡大しながら、川、水路、野鳥などによってサクラメントの水田地帯に分散したと考えられる。このような後代を含む集団に除草剤が連用され、抵抗性個体が除草剤による自然選択を受けた結果、本実験で明らかにしたように、形態形質とAFLPフィンガープリントにおいて大きい類似性をもつ抵抗性系統が顕在化したと考えられる。
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