硝酸還元酵素による一酸化窒素(NO)生成に関する基礎的研究

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12660048
• 研究機関: 琉球大学
• 研究代表者: 山崎 秀雄 琉球大学, 遺伝子実験センター, 教授 (40222369)
• キーワード: NO / 窒素同化 / 一酸化窒素 / 酸化的ストレス / 活性酸素 / 活性窒素 / バイアグラ

研究概要

動物細胞では、NOとはNO合成酵素(NOS)によってアルギニンから生成されることが知られている。同様の機構が植物細胞でも仮定されているが、現在までNOSのタンパクも遺伝子も単離されていない。我々は、1999年に窒素同化代謝の鍵酵素である硝酸還元酵素(NR)が、通常の生産物である亜硝酸を基質としたときにNOを成成することを証明した。本年度はNR依存性のNO生成を示すin vivo率での証明を試み、植物におけるNR依存性NO生成の生理的重要性を明らかにすることに主眼を置いた。単細胞緑藻のクラミドモナスを用いて、生細胞でも亜硝酸の添加時にNOが放出されることを明らかにした。この反応は、NRの阻害剤によって完全に消失し、NRを欠失したクラミドモナス突然変異体では全く観察されなかったことから、生細胞でもNRによってNOが酵素的に生成されていると結論した。一方、ソラマメの孔辺細胞に対する亜硝酸の効果を見たところ、NO発生剤と同様に気孔の開孔を促す効果があることが分かった。NO依存性信号伝達系の緩和阻害剤である勃起不全薬バイアグラを孔辺細胞に吸引させると、過酸化水素誘導性の閉孔反応が著しく阻害された。これらの結果は、動物細胞におけるNOSと同様に、NRがNO成成に関して生理的に重要な働きをもっていることを示唆するものである。

研究成果

• [文献書誌] Yamasaki, H. et al.: "Inhibitory effects of nitric oxide on oxidative phosphorylation in plant mitochondria"Nitric Oxide. 5. 261-270 (2001)
• [文献書誌] Cohen, M.F.et al.: "Roles of plant flavonoids interactions with micorbes : from protection against pathogens to the mediation of mutualism"Recent Research Development in Plant Physiology. 2. 157-173 (2001)
• [文献書誌] Sakihama, Y., Yamasaki, H.: "Lipid peroxidation induced by phenolics in conjunction with alminum ions"Biologia Plantarum. 45. 249-254 (2002)
• [文献書誌] Sakihama Y. et al.: "Involvement of nitric oxide in the mechanism for stomatal opening in Vicia faba leaves"Biologia Plantarum. 45(印刷中). (2002)
• [文献書誌] Sakihama Y. et al.: "Nitric oxide production mediated by nitrate reductase in the green alga Chlamydomonas reinhardtii"Plant Cell Physiology. 43(印刷中). (2002)
• [文献書誌] Takahashi, S., Yamasaki, H.: "Reversible inhibition of photophosphorylation in chloroplasts by nitric oxide"FEBS Letters. 512. 145-147 (2002)