研究概要 |
リボソームのGTPaseセンターはタンパク質合成効率に寄与する機能部位であり、28S rRNA中の"GTPaseドメイン"とこれに結合するタンパク質成分、P0, P1, P2, eL12により構成される。蚕リボソームではGTPaseドメイン構造が特徴的で不安定であることを実証してきたが、本年度はこの部位に結合するリボソームタンパク質の性質を解析した。P1、P2、P0の各タンパク質を蚕絹糸腺リボソームより分離・精製し、タンパク質問相互作用とrRNA結合性およびリボソーム機能誘発活性をin vitroで分析した。その結果、1) P1-P2間に強い結合性があること、2) この二量体になり初めてP0に結合すること、3) 2組のP1-P2二量体がP0に結合し、P0(P1-P2)_2の五量体構造を形成すること、4) この五量体構造体を形成し初めてrRNAのGTPaseドメインに強く結合すること、を証明した。さらに、このタンパク質複合体は、eL12とともに、ラットおよび大腸菌rRNAにも強く結合することを明らかにした。また、得られた蚕タンパク質の機能を解析するため、大腸菌リボソームのGTPaseセンターを構成する相同タンパク質を特異的に遊離させ、その部位に蚕タンパク質を結合させた。得られたハイブリッド型リボソームの機能を解析したところ、蚕細胞の翻訳因子を受容し、合成poly(U)を鋳型とするPoly(Phe)合成活性を示した。以上の結果より、蚕リボソームのGTPaseセンターに存在するリボソームタンパク質、P1, P2, P0は互いの密接な相互作用により安定なP0(P1-P2)_2五量体構造を形成し、機能単位となることが示された。蚕GTPaseRNAドメインのユニークな構造はこのタンパク質五量体との結合により調整され、蚕に特徴的な機能構造を形成することが示唆された。
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