研究概要 |
新鮮火山灰に含まれるアパタイトと風化後に生成する土壌成分との反応性を調べた.アパタイト試料は1991年に噴出したフィリピン・ピナッボ火山灰の0.2-0.044mm画分から比重2.8以上の画分を分離することにより調製した.アパタイトと反応性の土壌成分としてアルミナゲル,シリカアルミナゲル,ゲータイト,鉄ゲル,および黄色土,グライ土,非アロフェン質黒ボク土,鹿沼土の粘土画分(以上,活性Al,Fe),クエン酸,シュウ酸を選択した.そして,これらとアパタイトの反応性をpH条件を変えて検討した.さらに,反応後のアパタイト粒子の形態と元素組成を走査型電子顕微鏡,エネルギー分散型X線分析により調べた. 各種活性Al,Feとアパタイトの反応性は活性Al,Feの種類よりもpH条件に大きく依存した.すなわち,終点pH4.5以上では今回検討した活性Al,Feとの反応性は概して低いのに対してpH4.5より下がると反応性が増大した.しかし,pH4.5以上の領域を詳細に見れば,活性Alよりも活性Feの方が若干反応性が大きい傾向であった.ところで,クエン酸,シュウ酸はこのpH領域においては活性Al,Feよりもアパタイト溶解能が強かった.これらの有機酸はカルシウムイオンをキレート結合し,リン酸イオンを溶出したためと推察された.また,クエン酸処理後のアパタイト粒子表面には溶出に伴う凹凸の増加が確認された.以上の結果から,植物機能を利用して火山灰アパタイトを有効利用するためには根表面を酸性にする機能,キレート剤分泌機能の強い植物が有望であることが示唆された.
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