研究概要 |
各種活性Al, Feとアパタイトの反応性は活性Al, Feの種類よりもpH条件に大きく依存した.すなわち,終点pH4.5以上では今回検討した活性Al, Feとの反応性は概して低いのに対してpH4.5より下がると反応性が増大した.しかし,pH4.5以上の領域を詳細に見れば,活性Alよりも活性Feの方が若干反応性が大きい傾向であった.ところで,クエン酸,シュウ酸はこのpH領域においては活性Al, Feよりもアパタイト溶解能が強かった.これらの有機酸はカルシウムイオンをキレート結合し,リン酸イオンを溶出したためと推察された.また,クエン酸処理後のアパタイト粒子表面には溶出に伴う凹凸の増加が確認された.以上の結果から,植物機能を利用して火山灰アパタイトを有効利用するためには根表面を酸性にする機能,キレート剤分泌機能の強い植物が有望であることが示唆された. 雲仙普賢岳火砕流堆積物の可給態リン含量は数十mgP_2O_5 kg^<-1>と少なかったが,粒度分画をすると粒度の小さい画分ほど可給態リン含量が増すこと,粗粒画分でも粉砕すると可給態リンの検出量が増すことなどはピナツボ火山灰と同様であった.細砂の重鉱物画分を用いて走査型電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分析によりリン含量に富む鉱物を調べると,Ca/P原子比からアパタイトと考えられる鉱物が単一粒子または他の鉱物の包有物として認められた.粗粒画分を粉砕すると可給態リンの検出量が増した理由は包有状態のアパタイトが粒子表面に露出したためと考えられた.アパタイトに含まれる他の陰イオンは塩素であった.同堆積物でキレート剤分泌能を持つキマメ,ヒヨコマメ等を栽培すると無リン区の生育はピナツボ火山灰より貧弱であったが,その理由は同堆積物が粗粒質で可給態リン含量が低いためと推察された.
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