研究概要 |
雲仙普賢岳の火砕流堆積物はこれまで用いてきたピナツボ火山灰より粗粒質であるうえ,可給態リン含量は1/5〜1/10とわずかで,リン供給能は小さい.このような過酷な条件のため,低リン耐性の強いソバを使うアパタイト利用に焦点を絞って検討を進めた.雲仙普賢岳火砕流堆積物をポットに詰めて,リン以外の施肥を行い,実を収穫できるまで,ソバを栽培すると共に,根圏にホローファイバーを埋設し,土壌溶液のpHとリン濃度を測定した.また,キレート能を有するシュウ酸の測定を行った.ソバが他の作物より生育が良かった理由はアンモニウム塩を窒素源として施与したときのpH低下が大きく,4付近まで下がったことであった.同様の結果はリン濃縮鉱物を分離して行った栽培試験でも確認された.さらにこのpH低下に伴う土壌溶液中のリン濃度の上昇も検出された.ソバ体をすりつぶすと8-11mmol L-1のシュウ酸が検出されたが,土壌溶液中にはシュウ酸はほとんど検出されなかったのでリン溶出の主な原因はpH低下によると推察された. アパタイトの中期的な活用の可能性をさぐるために,東北北部から北海道に分布する堆積年代の異なる火山灰土壌を用いて,自然の火山灰の風化,土壌化過程におけるアパタイトの形態変化はジャクソン法によるリンの形態分析法と電子顕微鏡法-エネルギー分散型x線分析法を併用して調べた所,アパタイトはA, Bw層で速く消失し,C層に相対的により長く残存することが明らかになった.
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