研究概要 |
多くの作物根に共生しているアーバスキュラー菌根菌(AM菌)は,リンなどの無機養分を供給することで作物生育を促進する有用微生物である.しかし純粋培養ができない等の理由から,実際に作物根に共生しているAM菌の群集構造の正確な評価は困難である.そこでAM菌の18SrDNAを作物根から抽出し,PCR法で増幅後,変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)法によって共生しているAM菌の群集構造を解析する手法を確立するのが本研究である.本年度は,DGGE法に着手する準備段階として,AM菌胞子からDNAを抽出し18SrDNAの塩基配列を決定する手法について検討した.すなわち2属4種のAM菌を供試し,それぞれの胞子中のDNAを凍結融解法によって抽出し,特異的プライマー(Simonら1992)によって18SrDNAを増幅することを試みた.その結果,4菌株全てにおいて特異的増幅に成功した.引き続き増幅したDNAの塩基配列を常法によって決定することを試みた.4菌株のうち1株については塩基配列が決定できたが,他の菌株については現在実験を行っている.来年度は塩基配列を決定したAM菌のDNA多型をPCR-DGGE法によって調べ,供試AM菌の識別が可能かどうかを調べる予定である.また作物根からのAM菌DNAの抽出とDGGE解析も行い,PCR-DGGE法を用いたAM菌の群集構造解析手法を確立したい.
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