亜熱帯森林生態系において、タイワンシロアリは、巣の拡張やギャラリーの作成中に不要になった下層土壌を、分解過程の樹木内部に多量に充填する。材中に充填された土壌の役割として、材の傷穴を土壌で詰めて活動場所の乾燥を防ぐ、天敵のアリからの防御壁の役割以外に、シロアリが運び込んだ土壌中の微生物の働きを借りて、堅い材を部分的に加水分解し、膨軟にして、シロアリが木屑として切断可能にする土壌微生物の接種と、充填土壌からの微生物増殖に必須な養分、とくにリン酸の補給が推察された。亜熱帯森林では、倒木あるいは立ち枯れ樹木は、土壌中にすき込まれなくても、土壌にすき込まれた有機物残渣の微生物分解と同様に、材中に充填された土壌によって、地上でも立枯れ木などの有機物は、分解・崩壊・消失が可能になる。 これらの作用の原因であるタイワンシロアリが分解材に充填する土壌の特性と、その役割を解明するため、(1)4種の角材(4cm×4cm×40cm)を土壌表面に放置し、材の重量減少から、材の分解速度の相違を検討した結果、モクマオウ<マキ<スダジイ<リュウキュウマツの順に分解速度が大きかった。(2)材中の充填土壌には、セルロース分解活性とフォスファターゼ活性の増大が認められ、材を膨軟にする土壌微生物の存在が推察された。平成12および13年度の研究・調査の実験結果を総括すると、亜熱帯森林におけるタイワンシロアリの営巣・摂餌活動が、森林生態系における土壌環境の改変に大きな影響を与えていることを明らかにした。
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