研究概要 |
ペプチジルアルギニンデイミナーゼ[Peptidylarginine deiminase](以下PADと略記)は蛋白質のArg残基を脱イミノ反応によりCit残基に変換する蛋白質修飾酵素であり、その生理機能は大変興味深い。PADには4種類のアイソタイプ(type I,II,III,IV)が存在し、それぞれ組織特異的な発現制御、ホルモナールな発現制御、発生時の経時的発現制御など様々な機構により微妙にその遺伝子発現がコントロールされていることが推測されている。本研究は、各アイソフォームの発現制御機構を分子生物学的手法を用いて明らかにするための研究である。すでに、我々はマウスPADアイソフォーム遺伝子の全ての5′-Flanking領域をクローニングし、それらの塩基配列を決定すると共に、これらの遺伝子が4番染色体のD-E領域にクラスターを形成していることを明らかにしているが、本年度の研究によりマウスPAD各アイソフォーム遺伝子のほぼ全領域の塩基配列の解明に成功した。全PAD遺伝子とも15個のイントロンで分断されており、イントロンの塩基長は各遺伝子間で異なるものの対応するエキソンの塩基長は全てのアイソフォーム間で一致していた。また、興味深いことに皮膚組織にのみに発現するtype IとIIIは直列に連続した遺伝子であり、両遺伝子の発現制御がクロストークされている可能性が高い。現在、各遺伝子のプロモーター領域の段階的欠失遺伝子をルシフェラーゼレポーター遺伝子に導入したプラスミドを作成し、主に上皮系培養細胞を用い、転写活性/促進/抑制領域の解析を行っている。また、本年度は併せてヒトPAD遺伝子、特にその発現制御異常に伴い発症する病気が知られている皮膚型PAD遺伝子(type I、III)に焦点を当て、両遺伝子の5′-Flanking領域をクローニングし、それらの塩基配列を決定した。さらに、type III遺伝子については、その基本転写制御領域を明らかにした。 次年度はtype Iについても解析を行う予定である。
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