大腸菌のABCトランスポーターLolCDEは外膜リポ蛋白質のみを内膜から遊離させ、ペリプラズムシャペロンLolAと水溶性複合体を形成させる。LolCDEの機能やATPの役割を明らかにするのが本研究課題の目的である。本年度の目標は、(1)LolCDE間の相互作用、(2)各サブユニットの機能、(3)ATPの役割であった。 (1)膜サブユニットLolCとLolEはLolD非存在下でも相互作用することを示した。また、LolCEとの複合体形成ができなくなるLolD変異を取得し、詳細な解析のための材料を得た。(2)内膜リポ蛋白質が誤って外膜に局在化する変異株を取得して解析した結果、その変異はlolC遺伝子にマップされ、この変異によってLolCのN末端から40番目のアラニンがプロリンに置換されたことが明らかになった。このアミノ酸残基は膜貫通領域のペリプラズム側に存在することはLolCの膜内配向性の解析から示され、LolCのこの領域が選別シグナルの認識に重要であることが強く示唆された。なお、LolEの膜内配向性も合わせて決定した。(3)LolCDEのATPase活性に対するリポ蛋白質選別シグナルの影響を調べた結果、内膜局在化シグナルを持つリポ蛋白質存在下ではLolCDEのATPase活性は促進されなかったが、外膜局在化シグナルを持つリポ蛋白質に依存してATPase活性の促進がみられた。このATPase活性の促進はLolA非存在下で観察された。これらの結果は、LolCDE複合体が直接リポ蛋白質の選別シグナルを認識していることを示している。 以上のように、研究は順調に進んでおり、新しい知見が得られている。
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