外膜リポ蛋白質のみを選別して膜から遊離させるABCトランスポーターの機能解析

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12660068
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 松山 伸一 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教授 (50183108)
• キーワード: 大腸菌 / 外膜 / リポ蛋白質 / ABCトランスポーター / タンパク質輸送 / ATP

研究概要

LolCDE複合体は、膜表面に存在するリポ蛋白質を膜から遊離させる全く新しいタイプのABCトランスポーターであり、そのホモログは広く細菌類に見いだされることから、重要な細胞機能を担っていると考えられる。本研究計画は、大腸菌におけるLolCDEの機能を分子レベルで明らかにすることを目的として行われた。
リポ蛋白質選別シグナル認識機構を解明するために、内膜残留シグナルを持つリポ蛋白質を内膜から遊離させる変異株を取得し解析した結果、lolC遺伝子に変異が生じていた。また、LolCDEのATPase活性は外膜輸送シグナルをもリポ蛋白質によって促進されることが明らかになった。これらのことから、リポ蛋白質選別シグナルはLolCDEによって認識され、特にLolCが重要な役割を担っていることが示された。
LolDホモログに共通に見られる保存領域「LolDモチーフ」の変異株の解析から、LolDモチーフはLolDのATPasc活性そのものを担う領域ではなく、LolCEからATP加水分解のシグナルを受け取る重要な領域であることが示された。さらに、LolCDEとペリプラズムシヤペロンLolAの相互作用がAMP-PNPで促進されたことから、ATPの結合が必須であることを明らかにした。
今後さらに詳細な機能解析を行うためにはLolCDEの3次構造の解明が必要であり、現在、LolCDEの結晶化に取り組んでいる。

研究成果

• [文献書誌] Tanaka, K.: "Deletion of lolB encoding an outer membrane lipoprotein is lethal for Escherichia coli and causes the accumulation of lipoprotein localization intermediates in the periplasm"Journal of Bacteriology. 183. 6538-6542 (2001)
• [文献書誌] Miyamoto, A.: "Mutant of LolA, a lipoprotein-specific molecular chaperone of Escherichia coli, defective in the transfer of lipoproteins to LolB"Biochem. Biophys. Res. Commun.. 287. 1125-1128 (2001)
• [文献書誌] Terada, M.: "Lipoprotein-sorting signals evaluated as the LolA-dependent release of lipoproteins from the cytoplasmic membrane of Escherichia coli"Journal of Biological Chemistry. 276. 47690-47694 (2001)
• [文献書誌] Narita, S.: "Disruption of lolODE encoding an ATP-binding cassette transporter is lethal for Escherichia coli and prevents the release of lipoproteins from the inner membrane"Journal of Bacteriology. 184. 1417-1422 (2001)
• [文献書誌] 徳田 元: "脂質で修飾された蛋白質を膜から遊離させるABCトランスポーター"蛋白質・核酸・酵素. 46. 1221-1227 (2001)