本研究課題は、発芽イネ種子におけるデンプンーショ糖転換調節機構の解明とデンプン代謝系の遺伝子操作による発芽力調節技術の確立を目指した。本年度は、主に発芽イネ種子においてデンプンーショ糖転換に関与する重要な部位である胚盤組織に焦点を絞り、プロテオーム解析を行った。そして以下の成果が得られた。1、発芽4日目の胚盤組織全タンパク質を2D-PAGEで解析し、417個のスポットを検出し、分子サイズおよび等電点を決定した。さらに、70スポットをEdmanシークエンシング解析し、47スポットのアミノ酸配列を決定した。2、発芽イネ種子胚盤組織タンパク質においてホルモンに応答して発現が変化するタンパク質をリストアップしたところ、典型的なアブシジン酸(ABA)-応答性タンパク質には解糖系酵素が多く含まれていた。3、GS-129スポットは、発芽イネ種子の幼茎、幼根でははっきりとした発現が見られず、胚盤組織において時期、組織特異的な発現が見られた。GS-129の発現に及ぼすホルモンの影響を調べてみたところ、ABAおよびインドール酢酸によって発現誘導され、ジベレリンによってそのABA応答が打ち消された。GS-129はN-結合型および0-結合型糖鎖を持つ糖タンパク質であることが強く示唆された。GS-129は、細胞壁に強く結合していたことから、超遠心機による遠心分画によって効率よく精製することができた。本精製法によりキシラン分解酵素の比活性が約18倍に上昇したことから、GS-129がキシラン分解酵素であることが示唆された。今後は、GS-129を中心に発芽イネ種子胚盤組織において発現がホルモンによって変化するタンパク質のセンスあるいはアンチセンス遺伝子を導入した形質転換体の発芽機能を解析し、発芽力調節技術の開発を進める。
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