研究課題/領域番号 |
12660073
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
門脇 辰彦 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教授 (90313973)
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研究分担者 |
北川 泰雄 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 教授 (50101168)
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キーワード | Wntファミリー / 膜結合型アシル基転移酵素 / ジスルフィド結合 / 小胞体 / アスパラギン結合型糖鎖修飾 |
研究概要 |
分泌性形態形成因子として機能するWntファミリーは、システインに富む分泌糖タンパク質であり、多細胞生物において細胞の運命や移動を制御するタンパク質群である。ショウジョウバエ体節極性決定遺伝子porcupine(porc)は、複数の膜貫通ドメインを持つ小胞体膜タンパク質をコードしており、この遺伝子を欠損するショウジョウバエでは、Wntファミリーに属するWingless(Wg)のアスパラギン結合型糖鎖修飾が不完全となる。一方、porcの過剰発現は内在性及び強制発現させたWg両方のアスパラギン結合型糖鎖修飾を促進する。Wgのアスパラギン結合型糖鎖修飾は小胞体内においてタンパク質翻訳後に起こるが、ジチオスレイトール存在下においてはタンパク質翻訳と同時に効率良く起こる。したがって、タンパク質翻訳と同時に起こるWgのジスルフィド結合の形成が糖鎖転移酵素複合体によるアスパラギン結合型糖鎖修飾と競合していることが明らかとなった。Porcは、Wntファミリー内において良く保存されているWgのアミノ末端側に存在する24(83-106)アミノ酸ドメインに結合することによりその周辺においてアスパラギン結合型糖鎖修飾を促進する。これと一致して、PorcはWgだけでなく、ショウジョウバエWntファミリーの一員であるDWnt-3のアスパラギン結合型糖鎖修飾及び細胞外への分泌に必須である。PorcはHedgehogのパルミチン酸化に機能するSkinny hedgehogと同様に、膜結合型アシル基転移酵素ファミリーに属することから、Wntファミリーのアシル化に機能することが示唆される。したがって、PorcはWntファミリータンパク質を小胞体内でアシル化することにより小胞体膜にアンカーすると考えられる。この作用により、アスパラギン結合型糖鎖修飾部位がタンパク質翻訳後においても糖鎖転移酵素複合体に認識されうると推測できる。
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