研究概要 |
トランスグルタミナーゼは蛋白質のリジンーグルタミン残基の間に共有結合(イソペプチド結合)を形成させることで、蛋白質どうしを架橋化させるユニークな酵素である。生物界に幅広く存在するが、哺乳類においては6つのアイソザイムが知られ、組織特異的な発現をしている。このうち皮膚表皮においては主に2つのタイプ、(TGase1,TGase3)が存在し、表皮細胞内の構成蛋白を架橋して、角質化に貢献している。本研究では、未分化な表皮細胞においては活性のないこれらの酵素が、分化に伴って限定分解を受け初めて活性化される現象に着目し、その分解を担う酵素群の探索と、活性化の機構を明らかにしようとするものである。 本年度は、皮膚における活性の多くを担うTGase3を中心に、未だ明らかでなかった組織分布の検討からはじめた。これは活性化酵素を探索・精製するために皮膚以外の組織を対象にすることが可能かどうか、また本酵素における発現制御の知見を広めるためである。その結果、マウスでは皮膚以外に、前胃および脳において発現することを新たに見出した。また、この結果を基にして各種組織由来の培養細胞株についてもその発現を検討した。蛋白レベルでは検知できなかったものの胃がん細胞MKN-1と神経芽細胞neuro2aで遺伝子レベルでの発現があることを明らかにした。 また遺伝子導入によってTGase3を構成的に強制発現する細胞株を樹立した。表皮分化に伴う変化をこの細胞に引き起こして、限定分解・活性化が生ずるかどうか検討を行った。まず、終末分化に見られる細胞死を起こして変化を調べたが、現在のところまだ限定分解・活性化をする条件は得られていない。
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