研究概要 |
本研究では,細胞特異的な結合活性を有する糖結合タンパク質(レクチン)と両親媒性α-ヘリックスペプチドとのコンジュゲートを構築し,抗菌活性または細胞傷害活性を有する新規なタンパク質を作製することを目的とした。まず,外来微生物に結合しその増殖を阻止することによって生体防御に重要な役割を果たしているマンノース結合レクチン(MBL)のラット肝臓からのクローニングを行った。ラットMBL遺伝子から化学合成オリゴヌクレオチドを設計しラット全RNAを鋳型にしてPCRを行ったところMBLの糖結合ドメイン遺伝子をクローニングすることができた。一方,ハチ毒ペプチドであり抗菌活性を持つことが知られているメリチン遺伝子を2本の合成DNAからPCRによって増幅し,MBL遺伝子と融合することによって新規なタンパク質遺伝子を作製した。これを用いて大腸菌により発現させたところ,予想される分子量(16,000)を持つタンパク質(Mel-MBL)が発現されたが,菌体を破砕したところ,ほとんどが封入体として沈殿画分より得られた。そこで,この沈殿画分を8M尿素によって可溶化後,透析によって尿素を除くことによりリフォールディングを行った。得られたタンパク質をウサギ赤血球と混合したところ,凝集活性が見られ,弱いながらも溶血活性も示すことがわかった。さらにこのような活性は,MBLの特異的阻害糖であるマンノースにより特異的に阻害されたことから,MEL-MBLは糖特異的な結合活性によって赤血球表面に結合した後に,メリチン部分と細胞膜との相互作用によって溶血を引き起こしたものと考えられた。以上の結果から,ここで作製したレクチンと両親媒性α-ヘリックスペプチドとのコンジュゲートは両者の機能を兼ね備えた新規なタンパク質であり,溶解性を高めるような発現条件を検討することにより,より効率的な生産が可能であるものと考えられる。
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