研究概要 |
本研究ではこれまでに,ラット血清レクチンであるmannose-binding lectin (MBL)遺伝子をラット肝臓全RNAよりPCRによってクローニングするとともに,ハチ毒ペプチドメリチンのアミノ酸配列から設計した化学合成DNAからメリチン-MBLハイブリッド遺伝子を作製したが、得られたタンパク質(Mel-MBL)は大腸菌体内で不溶性のインクルージョンボディとなりやすく、活性のある形で発現させるのは困難であった。そこで今回、プラスミドpET-32aを用いてN-末端に大腸菌タンパク質であるチオレドキシンを融合させた形で発現させ、さらに発現した不溶性画分から2Mの尿素を用いて可溶化することを試みた。その結果、尿素可溶性画分から融合タンパク質(チオレドキシン-Mel-MBL)が得られ、これをエンテロキナーゼでチオレドキシン部分を切断することにより、赤血球凝集活性及び溶血活性を有するMel-MBLを調製することが可能になった。一方、MBLとは糖結合特異性の異なるレクチンをコンジュゲート作製に用いるために、海産無脊椎動物グミ(Cucumaria echinata)のC型レクチンCEL-Iについても、まずその基本的な糖認識機構についてX線結晶解析を用いて検討した。CEL-I及びCEL-IとN-アセチルガラクトサミンとの複合体の結晶をハンギングドロップ蒸気拡散法を用いて作製し、それぞれについて構造解析を行ったところ、CEL-IがGalNAcを強く認識する分子機構について明らかになった。このデータを基にすることにより、異なる糖結合特異性及び細胞結合性を有するレクチンを分子設計し、コンジュゲート作製に利用することが今後可能になるものと考えられる。
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