研究概要 |
複雑な代謝経路の相互関係を理解することにより,アミノ酸発酵や有機酸発酵などが工業的に行われるようになってきている.本研究はその複雑な代謝経路の相互関係を理解することにより,過多炭素培地においても酢酸を生産しないような大腸菌の育種を目指している. 大腸菌の酢酸生成の主経路はAcetate kinase-Phosphotransferase(ack-pta)系である.この経路の欠失変異株の解析から,acetyl-CoA synthetase(acs)遺伝子をクローニングすることができた.Ack-ptaおよびacsの二重欠失変異株は酢酸利用はほとんどできないものの,過多炭素培地で酢酸生成を行うものであった.つまり,この二つの遺伝子以外に,酢酸生成に関与する遺伝子の存在を初めて明らかにしてきている. 平成12年度は次なる戦略として,二重変異株から酢酸を炭素源として生育できる復帰変異株を取得した.さらにその復帰に関与した変異遺伝子をトランスポゾンの導入により破壊し,酢酸利用不能となった株を取得した.トランスポゾンの導入部位を同定したところ,acetohydroxy acid synthase I(ilvB)遺伝子であった.IlvB変異株が酢酸を唯一の炭素源とする培地で生育できないことは,すでに報告のあるものであった. 現在,トランスポゾン挿入株のさらなる解析により,ilvB以外の遺伝子の関与について検討を加えるとともに,復帰変異株からの遺伝子導入により,二重変異株の酢酸利用を回復させる遺伝子の取得を試みている.
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