研究概要 |
葉緑体型APXアイソザイムの選択的スプライシングによる発現調節機構の解明 葉緑体型APXの前駆体mRNAにおける選択的スプライシング機構は組織特異的に発現制御されている。そこで、制御機構を明らかにするために、選択的スプライシングの制御のシス因子(SRE)と推定される23ntの配列(SRE)に様々な部位に変異を導入し、in vitroで生成させたmRNAに対するホウレンソウ核タンパク質の結合能をRNA-タンパク質ゲルシフト法により解析した。その結果、ホウレンソウやタバコの葉とタバコ緑色培養細胞ではSRE特異的に強い強度のシフトバンドが認められたが、根やタバコ黄色培養細胞では検出されなかった。シフトバンドはSREに種々の変異を導入することにより消失した。これらの結果から、SREを特異的に認識するRNA結合タンパク質(トランス因子,Factor X)は緑色細胞に存在しており、SREはtAPX mRNAの発現のためのエンハンサーとして機能していると考えられた。 葉緑体型APXを過剰発現もしくは抑制させた形質転換タバコを用いたAPXアイソザイムの生理的意義の解明 これまでに、葉緑体型APXは種々のストレス下において機能が低下していることが明らかになっている。そこで、葉緑体型APXの酸化的ストレス条件下での機能を検討するために、ホウレンソウおよびタバコのチラコイド膜結合型APX(tAPX)のcDNAを用いて、葉緑体型APXアイソザイムを過剰発現もしくは抑制したタバコの作製を試みた。ホウレンソウのtAPXcDNAをCMVプロモーター制御下に導入した遺伝子をアグロバクテリウムを介してタバコ(Nicotiana Tabacum cv. Xanthi)へ導入した結果、50系統の形質転換タバコ(TpTAP)が得られた。すべてのTpTAP系統は野生株と比較して約20-30倍のtAPXタンパク質量および活性を有していた。正常条件下でのCO_2固定速度、PSII活性および抗酸化酵素活性は両株間で有意な差は認められなかった。 一方、アンチセンス法により葉緑体型APXを抑制させるために、タバコのtAPXcDNAをCaMVプロモーター下流に逆向きに連結した遺伝子をタバコへ導入した。現在、5系統のT_1世代が得られており、形質転換体の確認を行っている。
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