ヒトチューブリン遺伝子発現酵母を作成する目的で、酵母チューブリン遺伝子の破壊を行った。出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeの野生型二倍体酵母W303を用いてTUB2遺伝子(ベーターチューブリン遺伝子)を破壊したところ、胞子形成能の極端な低下が起こり、一倍体を得ることが出来なかった。同様の結果はアルファーチューブリン遺伝子の一つであるTUB3破壊でも観察された。これらのことからW303株はチューブリン遺伝子破壊酵母の作成には適さない可能性が高いと考えられたため、遺伝子破壊に用いる酵母を出芽酵母から分裂酵母Schizosaccharomyces pombeに変更し、チューブリン遺伝子の破壊を行っているところである。またチューブリン遺伝子破壊と平行して強制発現によるヒトチューブリン蛋白質の発現を試みた。Gal1/10プロモーターの両側へヒトアルファー及びベーターチューブリン遺伝子を導入した単コピーベクターを作成し、二倍体W303株に導入した。得られた形質転換株はglucose培地、galactose培地ともに良好な生育を示し、誘導培地においてヒトチューブリン蛋白質の発現が認められた。しかしながら発現量は微量であり、充分量のヒトチューブリン蛋白質を得るには大量培養を含めた条件検討が必要であった。現在発現したヒトチューブリン蛋白質が培養時に安定に存在しうる条件の検討を行っている。
|