研究課題/領域番号 |
12660096
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
西田 芳弘 名古屋大学, 工学研究科, 助教授 (80183896)
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研究分担者 |
松田 和洋 国立ガンセンター研究所, ウイルス部, 主任研究官 (80251502)
松浦 和則 名古屋大学, 工学研究科, 助手 (60283389)
小林 一清 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (10023483)
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キーワード | 糖鎖 / フラーレン / フレノール / 生理活性 / 糖鎖結合フラーレン / 糖転移酵素 / セレクチン / L-糖 |
研究概要 |
本研究では、新しい生理活性分子としての「糖鎖結合フラーレン:Fullerene Glycoconjugates」の分子設計とその合成法を確立することを目的とした。糖鎖結合フラーレンは、物理特性や生物活性が全く異なる2つの機能性分子からなる新しい生理活性分子である。その分子設計と期待される生物活性について、申請者らが初めて提案した。一つの機能性分子は、水溶性分子「糖鎖」であり、他方は、脂溶性分子「フラーレン」である。両者が各々有する特異的な機能を、ひとつの分子に組み込みこむことによって、新しい生理活性を有する複合型機能性分子の開発が期待される。 平成12年度は、単純な糖分子を糖アジドに変換後、環化付加反応によりフラーレンに導入する手法について検討を行なった。得られた糖フラーレンの異性体をHPLCカラムによる分離、各種スペクトルメトリーによる構造解析を行った。その結果、本反応では、[5,6]-アザフラロイドと[6,6]-アジリジノフラーレンが約2:1で生成すること、さらにそれらの異性体の解析にCD(円偏光二色性)スペクトルが有効であることを、それぞれ明らかとした。また、これらを水酸化ナトリウム処理により、高い水溶性を有する糖鎖結合型フレノールを初めて合成した。それらは、糖認識レクチンに対して特異的な結合性を示すこと、さらに、フレノールにみられる赤血球凝集活性が糖の導入により緩和されることを見い出した。 フレーレンに導入する各種生理活性糖鎖を化学的、並びに、酵素化学的に合成するする手法について検討した。その中で、硫酸化糖鎖ライブラリーを硫酸加水分解酵素を用いて、位置選択的に合成し、炎症や癌転移の阻止に有効と期待されるセレクチンアンタゴニスト分子を効率的に合成する「糖鎖モジュール法」を提案した。糖転移酵素の新規反応を開拓することを目的とした研究の中で、ミルク由来の転移酵素がL-糖を含む糖鎖合成を触媒し、各種新規糖鎖を与えること、鎖状分子を基質として糖グリセロール骨格を形成することを、初めて見い出した。
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