グリコサミノグリカン(GAG)は、異なった機能を持つヘパリン型とコンドロイチン型に分類される。しかし、これら二型への生合成分岐点である還元末端から五番目のヘキソサミン転移機構は不明である。本研究では、GAGの生合成仕分け機構を解明するため、直接酵素的糖鎖伸長反応に用い得るプロテオグリカンを合成する。これまでヘパリン型糖鎖には、直結する疎水域とそれに続く酸性域コアペプチドが常に存在することが指摘されており、ヘパリンへの糖鎖伸長を決定づける五番目のGlcNAc転移酵素にコアペプチドを認識する部位が存在することを示唆している。そこで、標的化合物には、酸性・疎水性ペプチドシークエンスのセリン残基にGlcAGalGalXylからなるGAG四糖の結合したBetaglycanの部分構造を選択した。Betaglycanは糖鎖近傍に疎水性・酸性を持つS_<535>GWPDGYEDLES_<547>GDNGからなるコアペプチドを有する。Betaglycanがコアペプチド形成後、そのセリン残基に逐次単糖単位で糖鎖を伸長して形成されることを考えると、セリン近傍のペプチド環境は無視できない。興味深いことに、単離生成物のS_<535>とS_<547>にはそれぞれヘパリン型とコンドロイチン型糖鎖が結合している。 研究期間中には、まずS_<535>に四糖を持つヘキサペプチドを液相法により合成した。続いて、同じ化合物を固相法によっても合成し、より長い鎖長をもつ四糖ヘキサデカペプチドも合成できることを確認した。その結果、四糖クラスの中型糖鎖を固相担体上のオリゴペプチドに縮合できることを明らかにし、プロテオグリカン合成に新たな合成経路を開拓した。今後も、複数の糖鎖を持っプロテオグリカンや糖ペプチドの合成を継続する予定である。
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