研究概要 |
Bacillus sp.由来ウリカーゼについてX線結晶構造解析を行った。大型放射光施設Spring-8のビームラインBL41XUにおいてX線回折実験を実施した結果、2.2_分解能をこえる回折斑点が観測された。本結晶の空間群はP2_12_12、格子定数はa=133.8Å, b=144.6Å, c=78.9Åであり、非対称単位中に含まれるサブユニットの数は4分子と求められた。 次に既知のA. flavus UOXの3次元構造モデルの座標データ(PDB code:1UOX)を用いて分子置換法による初期位相の計算を行った。分子置換法の計算にはCNSを用いた。次に、溶媒領域の平滑化、及び非結晶学的対称を利用した平均化の手法を駆使して位相の改良を行い、さらに3次元構造モデルの精密化を行った。その結果、2.2_分解能においてR値=18%、R_<free>値=22%のモデルを得た(PDB code:1J2G)。A. flavus UOXと主鎖構造を比較した結果、A. flavus UOXでは4量体形成に関与すると考えられてきたループ領域に大きな主鎖構造の変化が認められた。これまでに示差走査型カロリメトリー測定及び動的光散乱測定を行った結果から、本酵素は、塩濃度が低い場合、温度上昇に伴ってまずサブユニットの部分的な変性が起こりその後に個々のサブユニットの変性に至るが、塩濃度が高い場合は8量体が形成されるためにサブユニットの部分的な変性が抑制され、部分的な変性が抑えられることにより熱安定性が増すと考えられた。このループ領域は2回軸で関係づけられる2つのUOX分子間の接触に関与していた。また、リガンドとして添加した8-azaxanthineの結合はA. flavus UOXのそれとは異なっていることが明らかになった。このことは結合モードを代えることで基質と阻害剤の認識の違いが制御されていることや、尿酸8位の酸素原子が基質の活性化に重要であることを示唆するものと考えられた。
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