研究概要 |
本年度の研究は、筆者らがこれまでかびTrichoderma sp.USF-2690株の培養ろ液からDPPH(1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl)ラジカル捕捉物質として単離した酸化ソルビシリン二量体のうちbisorbibutenolideとbisorbicillinolideの生合成経路を明らかにすることを目的としている。 まず^<13>Cラベル酢酸ナトリウム(CH_3^<13>COONaと^<13>CH_3COONa)を別々にかびTrichoderma sp.USF-2690株の培養液に加え、^<13>Cラベルbisorbicillinol(1)([1-^<13>C]-1と[2-^<13>C]-1)をそれぞれ得た。次にUSF-2690株を9日間培養し、得られた菌体を滅菌水で洗滌し、滅菌水に懸濁し、そこへ[1-^<13>C]-1と[2-^<13>C]-1をそれぞれ加え培養した。10時間後と72時間後に培養ろ液をpH3にし、酢酸エチル抽出、LH-20カラム、MPLCなどで精製し、^<13>Cラベルbisorbicillinolide(3)とbisorbibutenolide(2)とをそれぞれ得た。それらの^<13>C-NMRスペクトルを解析した結果、1から2が、また1から3が生合成されることが明らかとなった。 1から3を経て2が、また1から2を経て3が生合成される可能性があるので、2と3の生合成経路における関係を明らかにするため、非ラベル2と3とをそれぞれ洗滌菌体に加え、72時間培養した。しかし、2と3以外の代謝産物は存在しなかった。このことから、1から2が、また1から3が、それぞれ3、2を経由せず生合成されることが明らかとなった。また2と3は酸化ソルビシリン二量体の生合成経路の端に存在することが明らかとなった。
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