研究概要 |
Graphis属地衣類から単離した地衣菌は,共生状態ではノルスチクチン酸、単離独立状態ではグラフェノンという骨格の大きく異なる特徴的な代謝物を生産する。その成分変化を指標とすることによって独立状態から共生状態への菌の生理変化を調べている。とりわけ本研究では、藻類の抽出成分中から地衣菌に対して共生成立を促す化合物を探索している。まず上記の地衣試料から、藻類を単離し,BMM培地で大量培養を試みている。そして種々の条件で培養した藻類の成分を抽出し、単離地衣菌に与えて、一定時間ごとに培地中に生産されるノルスチクチン酸とグラフェノンを比較定量している。この検定法の用いて藻類成分について、単離培養条件下の地衣菌の生理状態を共生条件下と同じ状態にスイッチさせるような活性化合物を検索している。この実験は、各株の培養に約5-6ヶ月を要するため、活性物質を十分につくり出す最適培養条件を検討しつつも、その確定には到っていない。それでも、いくつかの培養条件下で活性が認められ、かつ単離された少量の化学成分については、HPLCの手法を用いて単離し,分光学的および化学的手法を用いてその構造を解析している。それらの成果の一部は、発表した論文中ですでに明らかにした。今後、その成分を他種の地衣単離菌に与えてその影響を調べる予定である。
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