研究概要 |
食品素材中に含まるポリフェノール、中でもフラボノイドが示す抗疾病機能については、これまでに多くの研究が行われてきており、各種機能が現在でも明らかにされつつある。しかしながら、同じポリフェノールに属し、また、赤〜紫色を示す果実・野菜類に含まれるアントシアニンの生理機能についてはまだ十分な研究が行われていない。実施研究では、アントシアニンが生体内で示す、新たな概能の開発と、機能の発現機構について、とくに生体内酸化制御機能に注目して研究を行った。 赤キャベツから、分離した主要な3種のアシル化アントシアニンは、パラコートで誘発したラットの生体内酸化を抑制すること、また、その作用機構の一つが、スーパーオキシドアニオンの生成と関わるNADPH-シトクロームP450還元酵素の活性阻害にあることを見い出した。一方、3種のアシル化アントシアニンは、糖尿病に伴う生体内酸化、遺伝子損傷産物としての8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OH dG)の増加、酸化型グルタチオンの増加、肝臓から血中へのα-トニフェロールの放出阻害などを抑制し、生体酸化に防御的に作用しているが明かとなった。 ポイズンベリーに含まれるアントシアニン(シアニジン配糖体)、およびナス主要アントシアニンのナスニンは、C型肝炎と類似の症状を示すことが指摘されているガラクトサミン誘発肝障害ラットの血漿GOT、GPT活性の上昇を抑制する他、障害に伴なうα-トコフェロールの肝臓からの血中への放出阻害,肝臓での遺伝子の損傷と急速なアスコルビン酸の減少などを抑制すことなどが明らかとなった。また、予めアントシアニンを給与した肝障害誘発ラットでは、その肝臓ホモジネートのラジカル発生剤に対する酸化抵抗性が、未給与群の場合に比べて高いことが明かとなり、一部は吸収されたアントシアニンあるいはその分解物が、生体内での直接的なラジカル消去を行っている可能性なども明らかとなった。
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