本研究は食物タンパク質抗原が摂取された後、生体内のどの組織において抗原提示されT細胞により認識されるのかを可溶化型のT細胞抗原レセプター(T cell receptor ; TCR)を用いて解析することで、免疫系による食物抗原の認識機構を解明することを最終的な目的としたものである。 食物アレルゲンであるβ-ラクトグロブリン(β-Lg)および卵白アルブミンを用い、抗原構造や抗原量を変化させTCRを介した刺激に変化が生じた場合に起こるT細胞の機能変化を明らかにした。 β-Lgに特異的なマウスCD4陽性T細胞クローンG1.19由来の可溶化型TCR (sTCR)をバキュロウイルス発現系を用いて調製した。sTCRβ鎖の定常領域下流にはビオチン化酵素(BirA)の認識配列が付加してあり、精製したsTCRにビオチン存在下でBirAを作用させることによりビオチン化され、さらにストレプトアビジンと反応させると多量体化sTCRが調製できることを確認した。 G1.19はβ-Lgの119-133残基ペプチド(p119-133)とI-A^b分子との複合体を認識し増殖するが、この増殖応答はsTCR添加により顕著に抑制された。これはG1.19細胞上のTCRとp119-133/I-A^b複合体との結合をsTCRが競合的に阻害したためと考えられた。抗原提示細胞表面上にp119-133/I-A^b分子複合体を形成させたのち、sTCRを用いてフローサイトメトリーにより検出した。抗MHCクラスII抗体の存在下、sTCRと蛍光標識抗TCR Cβ抗体で細胞を染色した場合に特異的なシグナルが観察され、sTCRが抗原ペプチド特異的に抗原ペプチド/MHC複合体と結合することが示された。
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