研究概要 |
(1)パイエル板におけるインターロイキン(IL-)5,IL-6産生機構の解析 パイエル板由来樹状細胞はCD40分子からの刺激やLPS刺激によりIL-6を産生した.また,パイエル板由来未感作型CD4T細胞のIL-6分泌能が高いことを見い出した.さらにパイエル板においてIL-2レセプター(IL-2R)を発現し,Thy-1,B220を発現しない非T非B細胞が,刺激に対し,IL-5を分泌することが明かとなった.このIL-2R発現細胞の細胞表面分子を解析した結果,この細胞は樹状細胞,マクロファージ,NK細胞のいずれでもなかった. (2)経口免疫寛容の誘導におけるT細胞内シグナル伝達機構の解析 OVAを長期間経口摂取し経口免疫寛容の誘導されたTCR-Tg由来脾臓T細胞において,T細胞抗原レセプター(TCR)からのシグナル伝達について解析した.経口免疫寛容により低応答化したT細胞はTCR刺激に対するLAT,ZAP-70,TCR-zetaのリン酸化の程度が低く,また,Ca2+/カルシニューリン(CN)経路の下流においてNF-ATの脱リン酸化および核内移行が抑制されていた.一方で,Ras/MAPK経路のERK,MEKのリン酸化は経口免疫寛容の誘導されていないT細胞と差が認められなかった.経口免疫寛容状態のT細胞においてTCR刺激によるTCR-zetaの活性化が阻害され,その結果,ZAP-70,LATの活性化が低く,このためCa2+/CN経路が活性化されず,これがT細胞低応答性の原因と考えられた.
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