研究概要 |
本研究では、牛乳アレルギーの強力なアレルゲンであるβ-ラクトグロブリン(β-LG)と酸性オリゴ糖を、可食性を維持した状態でハイブリッド化し、β-LGの有用機能である疎水性物質結合能の維持、β-LGの有する優れた機能特性のさらなる増強、アレルゲン性の低減化といった、多岐にわたる機能改変を同時に達成することを目的としている。ハイブリッド化に用いる酸性オリゴ糖としては、アルギン酸由来のオリゴ糖(ALGO、平均重合度4)を用いた。 β-LGとALGOを、重量比1:1で混合の後、50℃、相対湿度79%の条件で24時間メイラード反応させ、分子量22, 000、β-LG: ALGO=1: 6の組成のハイブリッド分子を得た。等電点電気泳動の結果、等電点は酸性側ヘシフト(pI<4.6)していた。また、ハイブリッドを還元カルボキシメチル化の後、トリプシン分解の後、逆相HPLCで糖鎖結合ペプチドを分取し、シークエンシングを行い、糖鎖結合部位を^<60>Lys、^<77>Lys、^<100>Lys、^<138>Lys、^<141>Lysと決定することができた。さらに、自然蛍光の測定、CDスペクトルの測定、モノクローナル抗体を用いたELISAによる構造解析の結果、ハイブリッドはβ-LGのネイティブ構造をほぼ維持していることが明らかとなった。 ハイブリッド化による機能改変として、熱安定性の向上、乳化性の改善、抗β-LG抗体産生性の低下を達成することができた。さらに、ピンペプチドを用いたT細胞増殖試験を行った結果、ハイブリッド化により、T細胞エピトープの分布が大きく変動しない状態で、特にC末端側において低下したことを明らかにすることができた。ALGOとのハイブリッド化により、β-LGの免疫原性を効果的に低下させるごとができ、そのメカニズムとして、糖鎖によるエピトープの遮蔽が重要であることを明らかにすることができた。
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