大豆イソフラボンは化学構造がエストロゲンと類似しており、エストロゲン作用をもつことから、種々のガン、骨粗鬆症などに対する好影響が注目されている。抗動脈硬化因子であるアポリポタンパク質A-I(ApoA-I)レベルはエストロゲンなどのホルモンによって変動することが知られており、大豆イソフラボンにも同様な活性が期待される。しかし、ApoA-I遺伝子発現に対する大豆イソフラボンの影響は、ほとんど検討されていない。そこで本研究では大豆イソフラボンであるゲニステインを用い、ApoA-IとApoA-I mRNAレベルに与える影響、及びその作用メカニズムについて検討した。 HepG2細胞へのゲニステイン添加により分泌されたApoA-Iは対照と比べて有意に上昇した。またApoA-I mRNAレベルの上昇傾向が見られた。エストロゲン受容体(ER)α発現プラスミドをトランスフェクションしたHepG2細胞へのゲニステイン添加によりApoA-I遺伝子転写活性は対照と比べて有意に上昇した。ApoA-I遺伝子プロモーターの-264〜-191もしくは-80〜-44領域を欠失させたApoA-I-CAT変異体プラスミド及びERα発現プラスミドをトランスフェクションしたHepG2細胞へのゲニステイン添加により、ApoA-I遺伝子転写活性の上昇は見られなかった。 これらの結果から、ゲニステインはApoA-I mRNAレベルを上昇させることにより、ApoA-Iレベルを上昇させることが明らかにされた。さらにゲニステインによるApoA-I遺伝子の転写活性化はERα及びApoA-I遺伝子プロモーターの-264〜-191及び-80〜-44領域を介して誘導される可能性があることを初めて明らかにした。
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