つくば高血圧マウスによるACE阻害ペプチドの降圧機構の解明 12週齢のつくば高血圧マウス(THM)に対してACE阻害ペプチドであるVYを単回経口投与(0.1mg/g)した。その結果、投与前の収縮血圧(SBP)は137.8±4.8mmHgであったのに対して、投与1時間後においてすでに明らかな血圧低下作用が認められ(DSBP ;16.1±2.7mmHg)、この降圧作用は9時間まで有意に持続した。このTHMでの明らかな血圧低下は、VYが降圧活性を有したペプチドであることを明示しており、その作用がヒト循環RA系を中心に発現していることを示唆するものであった。 次に、投与1時間及び6時間後の血漿を用いて、降圧期間中でのAng類の代謝挙動から降圧挙動を解析した。その結果、投与1時間後において、VY量の蹟著な増大に伴ってAngIの増加とAngIIの減少が確された。このことは、吸収されたVYが循環系に存在するACEを直接的に阻害することによって循環系を制御していることを示すものであった。しかしながら、投与6時間後においてはすでにいずれの代謝物量も投与前のレベルに復帰していたことから、投与されたVYの循環RA系に対する抑制作用は一時的でると判断された。このことは、THMでのVY投与後の長期降圧作用の発現と相反する結果であり、9時間後までの有意な血圧低下作用の発現に対して、VYの未解明降圧機序が働いていることを強く示唆する結果であった。以上の知見は、VYの長期降圧効果の解明にはさらに循環系関連臓器に対する蓄積性と局在するRA系への影響を明らかにすることが必須であると考えられた。
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