研究概要 |
1)高血圧症者での降圧挙動判定 正常者で初めて明かにしたVal-Tyrの吸収・代謝挙動をもとに,イワシペプチド含有ドリンク(3mg/100ml)飲用開始後24時間までの高血圧症者の降圧挙動とVal-Tyr吸収量(カラムスイッチング蛍光HPLC法)から,外因性Val-Tyrの降圧力価を明かにした。すなわち、5名の軽症高血圧症者に対して、VYドリンク(6,12mg/100ml)を単回経口投与した。その結果、顕著な血圧低下作用(ΔSBP/ΔDBP=13/9mmHg)と同時に血中VY濃度は徐々に増大し、投与2時間後に最大(2137fmol/ml-plasma)を示した。ドリンク投与後の血中ANGI, II濃度を測定した結果、AngIの増加及びAngIIの減少が認められた。 2)イワシペプチドVal-Tyrの組織RA系での生理作用解明 血中内での主要代謝物であると同定されたVYについてヒト大動脈血管平滑筋細胞(VSMC、無血清SmGM培地;1×10^5cells/ml)に対するVY(10μM)刺激作用を検討した。その結果、明らかな細胞増殖抑制効果が認められた(Control×10^5;2.07-±0.08、VY×10^5;1.40-±0.04)。 3)つくば高血圧マウスによるACE阻害ペプチドの降圧機構の解明 12週齢のつくば高血圧マウス(THM)に対してACE阻害ペプチドであるVYを単回経口投与(0.1mg/g)した結果、明らかな血圧低下作用が認められ(ΔSBP;16.1±2.7mmHg)、この降圧作用は9時間まで有意に持続した。また、VY量の顕著な増大に伴ってAngIの増加とAngIIの減少が確認された。このことは、吸収されたVYが循環系に存在するACEを直接的に阻害することによって循環RA系を制御していることを示すものであった。しかしながら、投与6時間後においてはすでにいずれの代謝物量も投与前のレベルに復帰していた.以上の知見は、VYの長期降圧効果の解明にはさらに循環系関連臓器に対する蓄積性と局在するRA系への影響を明らかにすることが必須であると考えられた。
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