研究概要 |
多くの抗癌剤が癌細胞にアポトーシスを誘導することから、アポトーシス誘導は癌抑制の有効な手段と考えられる。最近、緑茶の主成分であるエピガロカテキンガレート(EGCg)に癌細胞アポトーシス誘導活性があることが明らかになり、茶の抗癌作用の一端が説明できるようになった。本研究ではEGCgやその他の茶成分による癌細胞アポトーシス誘導とそのメカニズムを明らかにすることを目的とした。EGCgはヒト単球性白血病U937細胞に対しアポトーシスを誘導するが、このアポトーシス誘導メカニズムを解明するために、EGCgを固定化したアフィニティーカラムと細胞融解物の相互作用を調べたところ、FasがEGCgカラムと結合することがわかった。さらにFasの下流に存在するカスパーゼ8が、EGCg処理により時間と濃度依存的に活性化されることからEGCgはFasを介してアポトーシスを誘導することが示された。 次に、茶(緑茶、紅茶、プーアル茶、ウーロン茶)の分子量が12,000以上の水溶性高分子成分(TNDs)を用いてアポトーシス誘導活性について調べた。TNDsのU937細胞増殖抑制活性を調べた結果、紅茶>プーアル茶>ウーロン茶>緑茶高分子画分の順に強く増殖を抑制した。また、アポトーシス小体様の形態的変化、DNAラダー形成誘導、カスパーゼ阻害剤によるラダー形成阻害などからTNDsがアポトーシスを誘導することが明らかとなった。 アポトーシス誘導と細胞周期停止の関連性について調べた結果、0.6mg/mlの紅茶高分子成分はU937細胞にG2/M停止を誘導し、p21の遺伝子発現を上昇させることがわかった。一方、EGCgには細胞周期停止活性は認められなかった。 茶成分によるアポトーシス誘導に関する本研究結果は、茶の飲用が癌死亡率を低下させるという疫学研究の結果を説明する新しい知見になると考える。
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