研究の目的:多くの抗癌剤が癌細胞にアポトーシスを誘導することから、アポトーシス誘導は癌抑制の有効な手段と考えられる。最近、緑茶の主成分であるエピガロカテキンガレート(EGCG)に癌細胞アポトーシス誘導活性があることが明らかになり、茶の抗癌作用の一端が説明できるようになった。本研究ではEGCGやその他の茶成分による癌細胞アポトーシス誘導と、そのメカニズムを明らかにすることを目的とした。結果:1)アゾキシメタンによるラット大腸癌誘発系において、緑茶投与が前癌病変を抑制し、大腸細胞のアポトーシスを誘導することが組織染色法、蛍光抗体法、TUNEL法等により明らかになった。2)EGCGとニメスリドの組み合わせにおいてもU937細胞に対するアポトーシス誘導に相乗効果がみられた。3)マウス肺癌細胞LL2細胞に対してもスリンダクやニメスリドはEGCGによるアポトーシス誘導効果を高め、invivo系においてもスリンダクとEGCGの同時投与がマウスに延命効果があることがわかった。4)正常ヒト繊維芽細胞WI-38およびそのウイルス形質転換細胞WI-38VAに対するEGCGの作用を調べた結果、EGCGは癌化細胞に強くアポトーシスを誘導することがわかった。5)WI-38とWI-38VAにおけるmRNA発現の違いをDNAチップを用いて調べた結果、IL-8など数種のmRNAが増加し、フィブロネクチンなどのmRNAは減少することがわかり、RT-PCRによる解析の結果とほぼ一致することがわかった。6)マウス繊維芽細胞Balb3T3とそのウイルス形質転換体を用いて同様の実験を行った結果、EGCGのアポトーシス感受性が異なることが明らかになった。
|