1.オボムコイドに対するモノクローナル抗体を作製し、一般的には熱変性しにくいと思われているオボムコイドが、加熱により凝集はしないが、未変性とは抗原性を異にする安定な変性状態をとることを明らかにした。 2.卵白アレルゲンとして、オボムコイドとオボアルブミンの優劣が議論されている。市販のオボアルブミンには少なからぬオボムコイドの混入があり、従って市販抗オボアルブミン抗体もオボムコイドと反応した。抗オボムコイドモノクローナル抗体カラムを用いることにより、オボムコイドフリーオボアルブミンを調製後、それに対するポリクローナル抗体を取得し、オボアルブミン特異的定量系を確立できた。市販試薬の純度、特異性には十分注意する必要があろう。また、卵白の中に、抗オボムコイドモノクローナル抗体と反応するオボムコイド以外の画分が存在することも明らかとなっている。 3.オボムコイドに対するサンドイッチ酵素免疫測定法を確立し、37検体の母乳中12検体に0.3〜37ng/mlのオボムコイドを検出した。ゲル濾過分析の結果、本来分子量28kDaのオボムコイドが母乳では分子量約450kDaの位置に溶出され、分泌型IgAとの免疫複合体として存在していることが予測された。事実、抗オボムコイド抗体とアルカリホスファターゼ標識抗ヒトIgA抗体を用いた酵素免疫測定法により、オボムコイドの溶出パターンとそのIgA免疫複合体の溶出パターンが一致する事が確認された。消化吸収系の未発達な乳児において、アレルゲンを免疫複合体とすることでその腸管での吸収を阻害し、アレルギー発症を抑えているのかもしれない。
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